工作機械の歴史 ⑤ 201210
教育2020/12/14
工作機械の歴史 ⑤
【NC(Numerial Control)】
数値制御装置の開発と工作機械業界の構造変化
●NC装置の発明
・1948年 J.T.Parsonがパルス(電気信号)で
工作機械の各軸を制御し、駆動させて、複雑な輪郭を切削す
る装置を考案
・1952年 3次元の形状の切削を制御に成功
この制御方式がNC(Numerial Control)
当初、数値制御に必要なNCテープは手作業⇒効率が悪い
・1954年 IBMがカードをテープに変換するプログラムを
開発し、電子計算機でNCテープを作成できる⇒実用的な段階
・1958年 カーネイ&トレッカー社が(フライス、ドリル、
リーマ、タップなど)数種類の切削を行うことができるATC
(自動工具交換機能)を開発
マシニングセンターの先駆け
☆フライス盤+NC装置+ATCマシニングセンター
それまで、数十年も経験を積んだ熟練技術者が工作機械を手動
で操作して100分の1mm単位でモノづくりを行っていたが、
NC装置+ATCの発明により、プログラミングで自動運転で
要求された精度のモノづくりを行えるようになった
●日本初の数値制御(NC)装置
・1956年 富士通の計算制御部門(現ファナック)が開発
タレットパンチプレスに装着
・1958年 マキノフライス製作所が搭載して商用化
工作機械の技術の進化と共に、一層高機能化して、1980年代
のモノづくり産業に強い影響力を与え、日本を経済大国に導く主
要な技術の1つとなった
●1970年代から工作機械の急激なNC化
ファナック、三菱、安川等の専門メーカーに依存
(NCを社内製作するオークマ(OSP))
ファナックのシェア(国内7割、世界5割)
世界最大のCNCメーカーとして君臨している
・1974年に電気、油圧パルスモーターをDCサーボモーター
(回転角度、回転速度の制御が可能なモーター)に切り替え、
サーボモーター採用のNC装置を発表した
・1979年に旋盤用CNC装置を発表
・1982年 ACサーボモーターを開発し、以後のCNC装置
にはACサーボモーターが使用されている
ファナックを中心としたNC/CNC装置の供給によって、NC
工作機械生産への参入は容易になり、多くの企業が参入したため
に競争は激しくなり、価格競争
⇒(機械が安く品質が上がると)
老舗工作機械メーカーの廃業、欧米市場での貿易摩擦問題要因
・従来
設計図→作業表→熟練技術者が主導で機械加工
・NC化
CNCに直接入力→機会が自動加工
作業者事の時間、品質の差が激減
治具、特殊工具、ゲージ類激減
高速加工への可能性も広がった
●工作機械業界の発展
1982年~2008年までの27年間、日本は1位
(現在は中国が1位)
工作機械業界の売り上げ年間1兆円規模
(1985年に初めて1兆円)
1994年バブル崩壊5540億
1990年\
2008年─1兆3000億
2018年/
2009年リーマンショック4000億
2020年コロナ4000億~5000億?
1970年~NC化が拡大
1990年8割以上NC機
NC化の進展に伴い、輸出比率が急上昇
輸出比率
1971年~1974年 10%
1975年 26.7%
1975年~1977年 30%以上
1978年~1979年 40%以上
1985年 60~70%
2002年~2003年 80% 輸出
1985年、アメリカの工作機械輸入額52%が日本
アメリカの1/4(小型の低価格NC、MC)
価格、品質、納期を海外に認められた+アフターサービスや
技術指導も評価された
・技術力を蓄えた日本は、NC技術を加えて、世界市場を
日本製NC工作機械で席巻する(1970年以降)
最初に危惧の念を示したのはアメリカ
1977年10月日本製工作機械のアンチダンピング法提訴
の動きに対して、フロアプライス(最低輸出価格)制を実施した
1980年欧州15か国にフロアプライスを実施、13年間継続
◎こうした政策に関わらず、日本製工作機械は進出
⇒貿易摩擦はますます深刻化
米国の国家安全保障に影響を及ぼす
→1987年~1991年の5年間、輸出自主規制を実施
(価格、数量規制を実施)
日本の工作機械各社は、販売戦略の見直しを行う
・バブル経済の崩壊後
内需 1990年~2000年代 長期低迷
外需 1990年 35%
1995年 68.4%
2000年 76.1%
2005年 73.4%
2010年 73%
ここ20年で工作機械工業は輸出産業化した
・2008年リーマンショックで欧米向け輸出は大きく減少
→東アジア市場の構成比が高まる(中国、タイ等)
・2000年代に入って、池貝鉄工、新潟鉄工、日立精機が経営破綻
(高級機械を得意としていたが、高品質のため長寿命、買い替え
ニーズが少ない+中、低価格帯のNC機が到来)
◎NC工作機械の到来によって、工作機械業界構造は決定的に変貌を
遂げた
・日本の工作機械世界一位達成は、《技術提携》による高精度工作
機械の製造技術の確立と、《CNC制御技術》に支えられて可能
になった
自分の仕事に取り入れたいこと
プログラミングの中で、まだ自分が知らない機能とかを説明書を見
て振り返りたい
今では当たり前にNCを使っているが、NCが無かった頃の熟練技
術者はすごかったと思う
今よりも使えるように頑張りたい
昔の人は今みたいにモニターもなく、ダイヤルの目盛だけで100
分台の仕事をしていたので、すごいと思う
ファナックが国内7割、世界5割のシェアを持っていることは知らなかった
ガソリン車から電気自動車に入れかわる時と同じように、ファナック
などが供給したNC/CNC装置によって、NC工作機械生産への参
入は容易になったことが分かった
時代の流れは少し似ているなと思った
NCが発明されてからの日本の工作機械の発展を知れた
1940年代~60年代の進歩のスピードも十分速いと思うが、今は
AIやロボット技術の発展でNCが開発された当時よりも高機能化の
スピードがより速くなっているので、ついていけるように情報をチェ
ックしたい
NC装置は1948年代からすでに考えられていたのはすごいと思った
工作機械業界の売り上げが、コロナでだいぶ落ち込んでいるが、再び
元の売り上げに戻るといいなと思った
現在普通に使用しているマシニングセンタの元となった機械の開発当時
の歴史を学ぶことができた
振り返り・今日の学び
NC(数値制御装置)が開発され、工作機械業界が大きく発展したこと
を学んだ
NC装置が発明されてからの工作機械の発展のすごさを知ることができた
1952年から3次元の形状の加工をしていたのに驚いた
熟練技術者しか加工できなかった製品も、NC装置の開発により、だれ
でも精度良く加工が出来るようになった。今後、紙の図面を読み込んで、
プログラムが作成されるような新しい技術も開発されれば、また世界が
変わると思った。
熟練技術者しかできないようなことが、NC化によって、だれにでもや
りやすくなったことが分かったが、そういった技術を持つ人の価値が薄
れるのは、少し悲しいような気もする
NCによって高効率な加工が可能になったことが分かった。
ファナックが日本のNC装置の進歩に大きな役割を果たしていたことが
知れた
老舗工作機械メーカーが廃業するほど、工作機械のレベルが上がってい
ることを知った
最低輸出価格制によって値下げがしにくい状況下でも、日本製機械が売
れ続けたというのは、当時の日本の技術力や勢いが良かったのだなと思った
NC装置の開発と普及、それによる日本の工作機械業界の発展について学んだ